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ふぐの毒について

2014/02/19

年間でもこの2月の時期はふぐがもっとも美味しい季節です。
しかしながら、最近少し気になる記事を見つけました。
アメリカのリーダーズ・ダイジェストという雑誌で紹介された内容で、
『美味しそうだけど勇気がいる食べ物・世界の珍料理トップ10』
の第1位に日本のふぐ料理が選ばれたとの事で・・・。

このランキング、2位以下にランクインしているのは
クモの天ぷらや、孵化直前のアヒルのゆで卵など、
結構すごい内容になっているのですが、なぜこれらを押さえて1位に
選ばれたのかと言うと、やはりふぐの『毒』がネックとなっているようです。
そこで、ここではふぐの毒について書いてみようかと思います。

ふぐの毒はテトロドトキシンと呼ばれるいわゆる猛毒で、
青酸カリの1000倍もの毒素を持つとも言われています。
そんな危ない魚を食べても大丈夫かと思うのが普通なのですが、
安全に食べられるのには理由があるのです。

まず、現在では食べられるふぐ食べられないふぐが明確にされています。
ふぐの種類は数十種類あるのですが、
食べられるふぐというのは、無毒という意味ではなく、
1個体の中で『可食部』と『不可食部』をあわせ持っているふぐの事です。

食べられるふぐの可食、不可食部位は大体次のような内容です。
・筋肉(身のことです)
・皮(ひれ含む)
・精巣(白子)
・卵巣(真子)

言うまでもなく『肝』と呼ばれる肝臓は猛毒です。

食べられるふぐにおいて共通するのは筋肉が食べられる事です。
皮は食べられるふぐと食べられないふぐがあります。
精巣も同様です。
卵巣においては、すべての種類のふぐで有毒です。
例えばこんな感じです。

 トラフグ・・・・・・筋肉○ 皮○ 精巣○ 卵巣×
 マフグ   ・・・・・・筋肉○ 皮× 精巣○ 卵巣×
 クサフグ・・・・・・筋肉○ 皮× 精巣× 卵巣×

○が付いている部位に関しては、毒がない事が確認されており、
業者や小売店はこの部分を調理・販売しているわけです。

一方の食べられないふぐというのは『可食部』が全くないふぐの事です。
つまり、上に書いた部位の全てに毒があり、
それ以外の部位も毒はなくとも食用に適さないふぐです。

このように、食べられる・食べられないの分類から始まり、
さらに食べられるふぐにおいては種類ごとに可食部・不可食部が
明らかにされているのです。

実はふぐの毒に関してはまだまだわからない事が多いのが事実です。
例えばふぐ自身が体内で内因的に毒を生成するのか、
それとも餌など外因的な理由で取り込まれるのか。
毒の量は同じ種類でも個体差があったり、季節によって変わったりと
ハッキリしない部分があります。

しかし、上にも書いたように、『種類ごとの食べられる部位』は明らかになっています。
その部位以外は決して食べないというのが最も安全な食べ方です。

たまに養殖のふぐは無毒などと耳にしますが、そんな事はありません。
ふぐの毒は外見からはわかりません。無色、無味、無臭のものです。
水洗いして落ちるものでもありませんし、加熱しても凍らせても無毒化しません。
紫外線にも強く、太陽光を1年間照射してもなくなりません。
そして何よりも免疫性が全くありません。
『何度か肝を食べたけど大丈夫だったから自分には免疫力がある』
などというのは勘違いで、たまたま無毒あるいは微毒のものだったに過ぎません。

天然、養殖に関係なく、肝を始めとする不可食部位に
毒を保有している可能性はあります。
だからその可能性がある部位は食べてはいけないし、
我々のような扱う側もお客様に提供してはいけません。

2012年10月に、東京都で身欠き(みがき)ふぐが解禁になりました。
身欠きふぐとは、ふぐ処理師免許を持つ人がさばいた
有毒部が除去されたふぐの事です。
解禁されたというのはすなわち、お店にふぐ処理師の免許を持つ人が居なくても
身欠きふぐを使って料理を提供してもよいという意味です。

当店でも身欠きふぐを取り扱っております。
そして、2名のふぐ処理師免許所有者のもと、お料理をご提供しております。
安全・安心なふぐ料理をぜひお楽しみ下さい。